サタンはこの時代 人々のエゴの汚泥の中で絶望していた。自身もそうした中にあってそうしたものを享受しながら 人間なんて どうしようもない存在なんだ。なんて愚かなんだ。 と 常に見下していたところがあった。 そしてその愚かさを直しようがないというところに絶望していたのである。 自らもそうした欲望の中に身を置きながらも周りに深く絶望していたのである。 このように書くと何か格好のいいピュアな好青年に思えるが 基本は自分本位で自分さえよければ良いというところは 他と代わりはなかったのであった。 そしてまた最終的には自分が一番というところにも強く こだわっていた。 サタンは時間があるとお城を出て 好みの女性や男性を物色に町に出る。この城下はいつも 活気があって人々で賑わっていた。 太古の昔から比べると 現代に近いことは近いのだが それでも200万 年以上前のことだから変わった動物もまだ存在していた。 市場には亀のような巨大な生物 が意外に 敏捷に 荷車を引いている。 見た目は大きな亀だが甲羅がなくて大人しい生き物だ。 またその大きさゆえ 三つ目の巨人族の人々も 目につく。 だいたい3m 半から大きい人では 5m ほどもある。 これは妖怪系の人々で戦闘用に雇われたり 土木作業に使われたりしている。 また戦闘用といえば 人間がその上に乗って 今の馬の代わりに使う トカゲの巨大なものもたまに見かけたりする。これは角があって コモドドラゴンのような格好をしているが 肌はぬめっとしていて 色彩も毒々しく 気味の悪いものだ。 ある日そうした様々なものが行き交い 賑わう 市場でサタンは生涯の親友となる男性を見つける。 最初はもちろん その肉体が、サタンの場合は 精神もだが、精神も弄ぶ その目的で近づいて いつものようにその怪しい目でじっと 相手の青年を目を見る 。普通ならこれで大概の男女はコロッと 参ってしまうのだが この青年は ん? という感じで全く手応えがない。 彼の名前はエンタフーと言って身分的には普通の庶民だった。非常に 純情な というか 純朴な青年で 裏表のない正義感の強い まっすぐな心根の青年だった。 顔はサタンの好みの美形だったが 肉体関係は持たないまま サタンもエンタフーもお互いを気に入ったようであった。 サタンにとっては本音を語れる唯一の相手となりエンタフーは何でも自由に自分の思った通りのことを成し遂げてしまう サタンに一種の憧れのようなものを抱いていた。 その後はほとんどいつも一緒にいるようになって、たまに 談笑したりして一緒に歩いているところを見た人々は、これまでの冷徹で非情な サタンの別な面を驚きとともに見るのであった。